本の未来に想いを馳せる時

本の未来に想いを馳せる時

本を読むという行為に託された奇跡。それは、自身の創造性をもって自らの心と頭を鍛えるところにある。


ゲームは楽しいし、映像は確かに興奮をする。しかし、想像するという負荷はほとんどかからない。全ての情報を与えられ、それらの刺激に受動的に反応する自分がそこにあることに気付く。環境に自分が動かされているという感覚だ。


一方、本を読むと言う行為は、それとは違う。断片的な限られた情報の中で、自身の想像を働かせながら、足らないピースを自らで補いながら読み進めていかなければならない。能動的に、イメージしながら意思をもって読み進めていかなければならない分、思っている以上に、負荷のかかる行為である。


しかし、本を読む行為によって練られていく、心や頭は、自らの人生のかけがえのない財産となる。本を読むという行為に隠された秘密は、日々の生活に豊穣なる恵みを与えてくれる。


現代は、本や文章、それに関連する諸事情の過渡期とも言える。また、歴史を見ても、それらは往々にして、同時期に起きる。


ゲーテが生まれ、グリムが童話を収集し、ドイツ語文法の基礎が成立した。また、紫式部が源氏物語を書き、竹取物語が収集され、カナ混じりの日本語の原型が誕生した。


今は、無限の情報に溢れ、書籍はどんどん電子化していき、それを読むデバイスも人それぞれだ。本を読む行為の変化の底には、時代の変化がある。読書文化の再構築期が現代であり、そのような意味においても重要な時を迎えている。